96年3月号

  「新情報時代と学校事務」(その9)

学 校 事 務  窓 を 世 界 に 開 く ?

                 元全事研電算化検討委員会(今回担当:二見恵美子)


1.はじめに

 この連載の一つの基盤である「新情報時代と学校事務」MLも、おかげでお読みいただける頃にはスタート後1年近くになっています。生まれたばかりの赤ちゃんも生後1年近くともなれば人生の第一歩として二つの足で歩き始める時期です。MLも成長を続けて会員は現在56名、メールの数も2千数百を数えるまでになりました。私のML参加は、学校事務誌96年6月号にも掲載されていますが、ちょうど1年前の全事研評議委員会終了後の会合からでした。
 皆さんの熱気あふれる内容と耳新しい言葉にちんぷんかんぷん。MLってなあに、新情報化時代?、メールの内容は?・・・?マークの連続でした。夜は更けていくし、不安一杯の一晩でした。(96年6・7月号参照)
 高々1年なのに、インターネットを中心に、驚くほどのスピードで社会は変化をしました。教育界においても、私の勤務先のある新潟県上越市において平成9年度から始まる市庁舎内のOA化に伴い教育ネットワークの基本構想(=「上越学習情報ネットワーク整備計画」)がまとまり、この4月から本格的運用開始となります。
 すでにこの連載の中でも、愛知県刈谷市、兵庫県神戸市の事例が紹介されましたが、今月は、上越市の動き出したこの構想について報告をします。なぜ、地方の一自治体がこんなにコンピュータを利用してのネットワーク計画を推進するのかという点を中心として。  その理由としては、上越市教育委員会が、平成7年度「文教施設のインテリジェント化に関するパイロットモデル研究」について文部省の委嘱を受けたことにあります。「整備計画」はこの研究がベースになっています。さらに、第二にはあの阪神・淡路大震災時にパソコン通信が威力を発揮しましたが、緊急時における災害対策も兼ねての一大計画です。  私自身も上越市の事務職員として、今何をネットワークで処理できるのかを検討しながら、原稿の筆を進めます。

2.「整備計画」の2本の柱

 第一は、「学習教育情報ネットワーク」(以下「JORNEネット」と略)です。高度情報化社会に対応できる人間を育成するためには、学校教育における情報教育の充実が不可欠と考えた訳です。市教委と各学校をネットワークで結び、各種の教材・資料・統計の検索のほか、学校間での情報交換もできるシステムを検討しています。さらに、インターネットを利用して、市内だけでなく市外、県外の他市町村の学校との交流、そして住民との交流も計画されています。
 第二は、市民の生涯学習活動の充実を図るための「生涯学習情報ネットワーク」(以下「生涯ネット」と略)です。生涯学習の各種学習機会や各種団体サークルの所在、施設の紹介等の生涯学習関連情報を提供できるよう市施設等市に端末機を設置するほか、市民の直接利用に供する予定でもいます。また、施設予約システムの導入も検討されており、端末のある施設で、当該施設はむろん他施設の予約も可能にします。さらに、自宅からの通信による施設予約が可能になるようにしたいとしています。
 また、JORNEネットと生涯ネットは相互に連携が図れられており、情報の提供・交換は次のようなメリットが期待できると思います。
(1)学校から地域への情報発信
 学校教育における日常活動の発表の場と学校の諸活動における地域住民の理解の促進を図る。学校行事の地域解放に関する情報の提供などを通じ、学校と地域社会の連携を深める。
(2)地域情報の学校での教育利用
 公共機関の所在・役割を知ることにより児童生徒の地域社会への理解を深める。上越市の歴史資料情報の発信なども活用する。

3.JORNEネットの構想概要紹介

3.1 実施計画の概要

 統括の主体として上越市教育委員会学校教育課があたります。生涯ネットを統括する社会教育課と緊密な連携を保ちながら、整備及び運営を進めることになります。
 基盤となるべきインフラ、データ整備、人材養成の三要素の整備を重視しており、相互に密接な関連性を保ちながら計画的に整備されるべきと考えられています。JORNEネットの構築の目的や各年度のねらいの達成に向けて、三要素が調和をとることが必要であるとし、以下の視点を重点にしています。
(1)子どもと教職員にやさしいシステムの構築
 多くの教師や児童生徒の活用を求めるには、簡単に操作できるシステムでなければなりません。何のために、いつ、どのような使い方をするのかといった目的やねらいなどに合ったシステムを検討し、より操作が容易なシステムを構築していく必要があります。最新技術と使いやすさとの融和が大切だと思います。
(2)研修の充実
 これまでの研修に加え、JORNEネットの活用にかかわる研修を設定し、学校教育情報や生涯学習情報の積極的な活用を側面からバックアップすることをねらっています。その際、次の点に重点をおくとしています。
 ・管理職の研修を重視する。
 ・転入職員の研修を重視する。
 ・授業や実践に即した研修を重視する。
 ・実情に応じ研修を選択できるようにする。
 ・県教育センター等の研修会との重複をできるだけ避ける。
 ・時期や時刻の設定を工夫した研修の実施。
(3)活用に関する倫理観の形成
 市では、他者を意識することを極めて重視しており、具体的には、個人の発信する情報がどのような価値、影響、責任をもっているかについて考えることで、倫理観に目を向けるようにする考えでいます。基本的な倫理観を手がかりにして、教職員や児童生徒がネットワークを活用するなかで自らの倫理観について考えていく・・・こうした方向を目指したいようです。

3.2 JORNEネットの構成

(1)市役所電算課のコンピュータを、学校教育情報が蓄積されたサーバ機として位置づけます。
(2)各学校と学校教育課に端末を置き、電算課のサーバ機に蓄積された学校教育情報を検索し、活用できるようにします。
(3)サーバ機と各学校の端末とはISDN回線で結びます。

3.3 JORNEネットへの加入

(1)加入単位
 加入単位は、学校を基本として、教職員や児童生徒の加入も認めていく方向にあるようです。さらに、開かれたネットワークを目指して市民にも開放していくことも視野に入れています。
(2)加入方法
 個人または学校単位で学校教育課に申請、ユーザ名及びパスワードを交付されることで学校教育情報ネットワークに加入できるとしています。ただし実際の参加は、運営規約を遵守することが条件となることは言うまでもありません。

3.4 将来に向けての構想と現状

3.4.1 校内のネットワーク化による開かれた学校の実現
 JORNEネットのねらいの一つは、「学校内外と情報の交換を積極的に進めることによって、開かれた学校を実現し、教職員と児童生徒の情報活用能力を育成し、豊かな心を育てること」とされています。
 しかし現在JORNEネット用の電話回線は、コンピュータ室と電子メールとして公的文書を受け取ることのできる職員室に引いてあるにすぎません。この状態では、教職員や児童生徒が学外へ情報を発信したり、市民が、学校へ情報を送信するためには不十分です。そこで、職員室のコンピュータを中心にして、事務室、保健室、図書室、コンピュータ室、教科研究室などにそれぞれコンピュータを設置し、ネットワーク化する構想でいます。校外情報を簡単に活用できたり、校内情報を容易に発信できたりすることで、教職員の高度情報化社会に対応した情報リテラシーの育成や学校の活性化を目指します。
 さらに、保護者や市民が学校内の学校教育情報を得たり、反対に地域の情報や学習に関する情報を学校へ送信することにより、学校と地域社会との双方向の情報交換が進めば、より以上に開かれた学校の実現が期待されます。
3.4.2 新潟県との連携
 県との連携を強化しつつ、ネットワークづくりを進める必要が強調され、将来的には、市内の県立看護短大、県立高校(8校)県立特殊学校(3校)等との連携を視野に入れつつネットワークづくりを進めるとしています。
3.4.3 一般行政情報との連携
 人口統計や土地利用状況、産業の様子など様々な統計データが実際の授業で利用可能です。具体的な数字に触れることは、児童生徒の興味・関心を高め、学習意欲の促進につながることと思います。
 生涯学習の分野においても、公開されたデータにより上越市の実際の姿を知り、市民が自主的活動に役立てていくことが期待されます。一般行政情報をどの程度公開可能かは別の角度から検討を要しますが、一般行政情報との連携は今後生涯学習の分野においても重要です。
3.4.4 上越教育大学との連携
 教員養成大学である上越教育大学は、修士課程において現職教員の再教育を行っており、地域の教育現場にもたらしている影響は多大なるものがあります。現在運用中のJK−NETでは指導案のデータベースが存在し、更に教材ついての整理充実が期待されています。これらは、さらに市民の生涯学習の中で活用できるとすれば、非常に有意義なことといえます。
3.4.5 近隣市町村との連携
 上越市は上越地方の中心的役割を果たしており、近隣市町村をも含めた生涯学習環境整備が要請されています。この観点からも、情報通信ネットワークは、閉鎖的であってはならず、開かれたものでなければならないと思います。

3.5 試験運用の現状

 以上が概略です。今年4月を目途に準備されているJORNEネットですが、すでに準備の整った箇所から試験的運用が開始されています。とりわけ、上越市教育委員会が中心となって、(主に、環境の整備)三つのMLが開設されたことは特筆してよいと思います。
 一人ひとりがメール・アカウントを取得し、できる者から参加しています。今、何をどのようなフォーマットで交換を行うのか・・・絵に描いた餅にならないよう試行しつつ検討を加え本格実施を目指しています。
(1)ひろばML
 話題及び参加者を限定しないMLです。
 市内の教職員に限らず、学校教育に関心のある方、上越地方に住んでいる人、上越地域の出身者など、関心のある誰もが参加できるMLです。
(2)教員ML
 教員及び教育委員会関係者等の情報交換を行うMLです。
(3)学校事務職員ML
 学校事務職員及び教育委員会関係者等の情報交換を行うMLです。1月10日現在MLが実施できる環境が整っているのは市内39校の内35校、残り5校も準備中です(年度末には整備終了見込み)。一斉に環境が整わなかったのは、上越市の学校事務用コンピュータの配置状況に原因があります。市では平成元年度から3ヶ年計画で事務用コンピュータを配置しましたが、進歩のめざましい時代に3ヶ年というのは余りにも長い年月で、配置する年度毎に機種が違ってしまったのです。市教委の懸命な努力で現在に至っていますが、MLを始めるに当たって障害が出てしまいました。Win95を基本に計画されましたが、予算的な面からとても無理があり、一部の学校でマッキントッシュを利用することとなり、2本立ての試験運用となりました。しかし、これは市全体から見ての状況であって、学校サイドで見るならば,ISDN回線が引かれ電子メールの交換が可能になった訳ですから、時代に沿った画期的な措置と考えるべきだと思います。
 既に、昨年12月から試験運用が始まっており、事務職員同士の情報交換はもとより市教委からの連絡も発信されています。現在は書類での連絡と並行ですが、既に電子メイルでの報告も受付が始まっています。
 今後どのような形で正式運用するかは検討中ですが、定例の報告・緊急の連絡・会議の案内等様々な利用方法が期待されます。既にMLにはどんどん会員の意見が発信されています。MLの利用方法の具体的な提案もありうれしい限りです。
 インターネット接続も可能なわけですから、全世界の情報を入手そして逆に発信することもできるわけで、新しい展開も期待されます。
 また試験運用中に新たな発見もありました。Win中心の中でマックの達人も出てくるなど、力強い限りです。今後事務職員個々の力を生かしながら全体のレベルアップに結びつけたいと考えています。

4.雑感=報告のまとめにかえて=

4.1 ペーパレス時代の到来?

 電子メールが定着し、学校事務の大部分が現在と大きく変わり、書類情報から、電子情報になったとき、果たしてペーパレスの時代がやってくるのでしょうか?JORNEネットでもその効果を期待しています。しかし、文書管理を考えただけでも時代にマッチしたものにして行くにはどうしたらよいのか。解決すべき問題は山積しています。ペーパレスはその点、まだまだ先と行った感じを私は持っています。

4.2 事務職員研修をどのように進めるか

 上越市で事務用コンピュータが学校に配置されてから9年目になります。市内統一した事務処理の内容としては、備品管理があります。そのほか各学校において事務の効率化のためにコンピュータを利用していますが、今年4月からMLによって教育委員会間の事務処理が実施されるとなるので、事前研修が必要です。例年市外からの転入者に事務研で研修会を3回開催していますが、年度始めの繁忙期のことを思うと今からきめ細かい計画を立案しておく必要があります。事務研の組織にOA研修を主に担当している部があり、今までの研修は、部内講師で賄っていましたが、今後部員自らの研修をどのような形で行うのか上越市教育委員会とも検討を重ねていきたいと考えています。

4.3 ひとりごと

4.3.1 毎日開けましょう。
 私は、勤務校にコンピュータがあり、通信の環境としては、恵まれています(但し使用料は私の口座から引き落とされる)。通信の時間帯は、朝の欠席連絡が一段落し、1限の授業が始まった午前9時頃が一番最適です。しかし回線が2本しかなく、1本を通信で占用すると緊急の連絡等が必要になると電話が使えなません。「電話の故障ではないか」と職員室から聞こえてくる声に気兼ねをしながらキーボードを打ちます。4月、5月は年度始めで忙しく、事務職員は一人、ついつい4、5日メールを開けませんでした。なんと200通着いていました。管理者の本川さんから「生きているの?」と電話での温かい励ましがあり、心機一転、電話回線の空いている時を見計らって1通ずつ読ませていただきました。以来、私のモットーは「メールは毎日開けましょう!」です。
4.3.2 私のインターネットへの挑戦!
 何とかメールを読むことができ、返事を書いている私ですが、文字になった文書を見たときの感激は、ひと味違うものです。ちょうど上越市でもインターネット講習会があり、進んで参加申し込みをしましたが、その時の受付電話で年齢は?と聞かれインターネットに年齢が必要なのかと憤慨した私でした。その講習会でのこと。隣の23歳の男性は、解説者の話す内容の理解も早く、キーボードの操作もスムーズでした。ここで負けてはいけないと研修に精をだした平成8年の夏休みでした。
4.3.3 長い話は?
 メールを読んでいて、最近気になることがあります。
 とにかく内容が豊富で読むのに大変です。一旦、ファイルに落として読むのですが、その時間がかかります。確かに早い情報をいただくのですが、もっと簡潔にならないのでしょうか。長い情報はお手紙で差し上げたらいかがでしょうか。すぐにメールを返信と思いつつも、読むのに疲れるこのごろの私です。
 ネットワーク時代に対する一つの提言です。


 この連載をかげで支えている(インタラクティブ=双方向性の実現=を目指す)「新情報時代と学校事務」メイリングリストへの参加は過去の連載を参照いただくか、東京都杉並区立方南小学校(Tel 03-3312-7661)の本川宛にご連絡をお願いします。


バックナンバーメニューページに戻る

jimu@cup.com