5月20日(水) 今日は何もない平穏な日。

 昨日とうとうA医師は来なかった。入院して初めてだ。ずっと待っていたので、シャワーの許可がでたのに入り損ねてしまった。ホントに技術が進んでいるんだなあと思う。傷口のこともそうだけれど、もうシャワーを浴びられるのだから。今日は何もすることがない。今日と明日が平和な日。

 9時近くになってやっとA医師の回診の声が聞こえる。来た来たとまるで恋人を待っているかのように胸が躍る。これがないと1日が始まらない。細胞診の結果がでるので、そろそろ帰ることを考えようとのこと。でも22日の予定までは入っているのだから、今週末くらいになるのかな。何れにしろそう遠い日でもなさそうだ。

 昼食はカレーライス。久しぶりに空腹感を覚えたこともあって、おいしく食べた。明日はリクエスト食だと思うとそれも楽しみだ。でも、それも明日まで、あさってからはまた厳しい日が続くのだ。今のうちにいっぱい食べておかなくちゃ。昼食後、シャワーを浴びた。久しぶりで気持ちよかった。

 その後、またベッドに横になる。何もすることが無くただボーっとしているとこんな人生でいいのかなと思ってしまう。せっかくこれだけ時間をもらったのだから何かやらなくちゃという焦りみたいなものを感じる。反面、それが今の私にとっては一番いけないことではないかとも思う。本を読めば、勉強すれば、とかいろいろ思うが、気力がでない。そうするとそれを責める自分が顔を出す。それがイライラを創り出す。今、何をするにしても中途半端なことしかできないことは分かっているのだからあきらめればいいのに。

 一休みしてから買い物に行くことにした。部屋を出ると向かいと隣の2つの部屋が空になっている。今日退院したようだ。

A室(今日空室になる) 廊下 B室(乳癌患者でない)
C室(今日空室になる) D室(今日空室になる)
E室(順と同じ日に手術) F室(順より前に入室?)
順さんの部屋 G室(少し前に入室)
H室(順より2日前手術) I室(順より前に入室?)



則裕の記録

 入院の日々が1週間を越えた。つまり、私の「通院」も1週間を越えた。それなりの状態で生活を送っているが、疲れていることは事実。O駅の2つ前で座れて、不覚にも居眠りをしてしまい、危うく乗り過ごすところであった。もちろん、体力を維持するために、なるべく座るなどの対応策をしているのではあるが。

 さて病院へ着くと、今日は3つの病室が空いていた。退院したのだろう。彼女が書いているように、順さん自体も、そろそろ退院に思いを馳せても良い状態になったらしい。ただし、病理の結果が今日出るというので、8時半過ぎまでいたが、A医師はおろか看護婦さえ巡回に来なかったので、今日のところはその結果はお預け。待つのに飽きたので、また部屋備え付けのユニットバスをつかわさせてもらう。

 実は昨日もA医師は夜には来なかったそうだ。丁度手術の患者が一段落して、そろそろ退院が始まって、新たな入院患者との入れ替えの時期なのだろうか。ただ、何れにせよ、順さんの病理の結果が早く知りたいものだ。

 さて今日は、順さんは買い物に出かけたようだ。勿論手術した胸のある右手は使わなかっただろうが、2リットルのペットボトルも買ってきたくらいだから、明後日に迫った2度目の抗ガン剤点滴も万全で望めることだろう。

 東京の中央線は慢性的に自殺者などで遅れることで有名だが、今日初めてO駅からの電車に遅れが出た。元々病院を出たのが8時40分頃だったわけだが、途中の時間調整などで遅れが広がって、結局帰ってきたのは9時30分近くであった。

 また昨日と同じ人から順さん宛に、お見舞いのはがきがあった。赤十字の募金も溜まってきたので、整理をした。