6月22日(月) 則は悪魔か


 今日も気分は最悪。なのに則は、何かしろと強要する。だらだらするなと脅かすのだ。

 でも、今は何もしたくない。動きたくない。起きたくない。本も読みたくない。テレビも見たくない。勿論食べたくもない。要するに何もしたくない。布団の中でただひたすら寝ていたいだけだ。

なのに則は何かさせようとする。そんなことを要求するな。何もしたくないのだから。もう抗癌剤は止めた。3サイクルが終わったら、誰が何と言おうともうやらない。それで死期が早まったって構わない。確率は五分五分なのだから、もう則の言うことなんか聞いてやらない。

 ぶつくさ言いながら病院へ行く。KNさんは明日で終わりと晴れやかな顔をしていた。私はあと1週間続く。でもあとたった1週間だ。早いものだと思う。そうだ、来月の今頃はもう夏休みになっているのだ。そしてその時には全てが終わる。
 病院へ行ったら頭がふらふらした。昨日今日と食べていないせいかも知れない。そう思って、前から食べたいと思っていた病院前の喫茶店でホットケーキセットを食べた。おいしかった。自宅最寄り駅へ帰ってきてから、まっすぐに家に帰るのも気が進まなくて1時間近くふらふらした。J商店街、K通り、A通りとジグザグに古本屋を中心に歩き回った。この頃には雨も止んでいて、これなら新宿へ寄って則の背広をとってくれば良かった。


則裕の記録

 今日も忙しい一日だった。一言で表せば、自立していない、先を見ない。指示すればやるし、悪意はないと思うが・・・愚痴っぽい話はそれくらいにして、しかる実態から私自身の仕事が進まない。よく教員が怒らないものだと妙に感心する、そういった毎日だ。

 さて順さんは私が帰るなり、「昨日より更にひどい表現をしてあるから」とのこと。つまりは上記の文章だ。憎まれる事は構わない。順さんが苦しいことは私にも十分にわかっている、いや半分くらい、いや四半分くらいはわかっている。だからこそ、冷たく思えるだろう行為をくり返すのだ。実際のところ、妹もだんなの見舞いにあまり来て欲しそうではない。なぜなら、私が行くときついことを言ってだんなが更に気が滅入るのではないかという彼女の恐怖心からだ。

 さて、悪魔の申し子と改称した私は、今日も食べろと言おうと考えていたのだが、結構順さんは食べた。冷凍のスパゲッティと、アロエの入ったゼリーと、グレープフルーツ半分と、ウインナーと数本とチーズ少々。ちょっとバランスは悪いが、量的には十分だ。悪魔の目にも涙。