5月17日(日) 入院第5日目。雨の日曜日。ガーゼをとる。

 夕べはどういう訳か1時間おきに目が覚めてよく眠れなかった。と言って夢を見たわけでもない。が、頭はボーッ、お腹もグルグル便秘で気持ち悪い。則に電話して下剤を持ってきてもらおうと考えていた。

 外は久しぶりの雨。今日も長い1日が始まる。

 お昼頃来ると言っていた則が朝食の前に来た。洗濯物を届けてくれたのだが、パジャマにもきれいにアイロンがかけてあった。これならYシャツも大丈夫だろうと合格点をあげた。が、電話前に来てしまったので薬は後で考えよう。

 朝食は、日曜日のせいかごく簡単なパンと野菜炒め。でも、これくらいが丁度いい。食べ終わってから、則がこれのインターネット版を見せてくれた。そうしているうちになんと今日もA医師の回診があった。今日はてっきり休みだろうと思ったのに。そこでガーゼをとってしまった。残っているのは傷口を張り合わせている絆創膏のようなものだけ。こんな簡単でいいの?と思うくらいの痕になってしまった。でも休みの日にまで患者を見に来るなんて、きっと近くに住んでいるのかなあ、と則と話し合ったが、それにしてもすごいなあ。[写真は傷口部分。左下の出血部分にドレンチューブが着いていた部分。]

 10時、西友開店の時間にあわせてまた外出する。近くの金融機関をチェックしてから西友に行き、昨日と同じブラジャーを買う。その後、則の食事(昼・夜2食分)と飲み物を買う。約1時間の散歩が体によかったのか、いくらか気持ちの悪さは残るが、昼食は久しぶりにおいしいと感じる食事だった。ご飯は少し残したが、後は全部食べた。則が買ってきた分までちょいといただく。

 午後の検診(体温は36,5度)を終えてから今度は院内散歩に出かける。看護婦に、もっと腕を上げるようにするよう指示されたが、どうも切れそうで怖い。が、少しずつ少しずつ練習をしておかねば。30分ほど歩いてから遅めのおやつ。則がメロンを買ってきてくれていたのでそれを半分食べた。おいしかった。父が最期になって何も食べ物を受け付けなかったときに、メロンだけはおいしいおいしいと言って食べたことを思い出す。やはりメロンはおいしい。血筋かな。

 キリンカップを見る。カズは出なかった。残念。特に好きというのではないが、周りからバッシングされている彼の頑張る姿を見たかった。日本人特有の判官贔屓かもしれん。昨日はテレビで巨人ヤクルト戦を見たし、このところこういうスポーツ番組を見る気力が出てきた。

 夕食はご飯以外全部食べた。まだ気持ち悪さが残っているが、看護婦の問診には、元気です、食事も殆ど食べています、傷も痛くありませんと答えている。そうすれば1日も早く家に帰れるような気がして。7時の検温も37度近くあったので、少しおとなしく横になってもう1度計り直して36.6度まで下げた。こんな細工をしてとは思うけれど、とにかく早く帰りたい。


則裕の記録

 午前中雨だという予報だし、天気の回復は順さんのいる方が早い模様なので、とりあえず朝御飯に間に合うように、5時30くらいに家を出る。おっと、その前に洗濯した順さんのパジャマにアイロンをかけた。スムーサーを使ったために、なかなかうまくいった。

 朝食には十分間に合った。朝食は順さんが書いているようにやや少な目であったが、食欲のない順さんには丁度よい量だったようだ。昨日はあまり眠れなかったようで、毎時10分(0時10分・1時10分・・・)毎にきちんと目を覚ましていた。体に変調を来さなければよいが。

 今日もまたブラジャーを求めて西友へ行った。昨日のヨーカードーには1つしかなかったので、もう1枚買うため。丁度雨も9時前後にはあがった、日がさしてきた。およそ1時間の散歩が功を奏したのか、昼食は結構量があったものの、殆どを平らげ、なおかつゴマ豆腐(私が自分用に買ってきたもの)を少し食べた。やはり体を動かすことが大切のようだ。食事の後、私は昼寝モードに入って、けっこう寝た。水銀式の体温計を下げろと言う順さんの指示で起きたが、少し頭が朦朧としている。食べては寝、食べては寝の生活では、太るし、体がなまる。[荷物も持てるようになった・・・]

 3時頃看護婦が巡回に来る。右手はもう少し動かすように指示される。また切開した部分に貼ってあるシール(一番小さいバンドエイド位の大きさの粘着性のテープ)は自然に剥がれるそうだ。ここの看護婦は乳ガン手術患者ばかり診ているので、質問にも即座に答えるし、人による差もない。A医師の話によれば、これまで2000件もの乳ガン手術をしているそうだから、連中としても結構なれているのだろう。安心感がある。そういえば、日曜日にもかかわらず、今日も新たな患者が入院してきた。

 巡回の後、少し時間をかけて院内散歩をした。その後メロン半分を、順さんは持て余すだろうから後あげると言っていたのに、全部平らげてしまった。やはり運動はよいのだろうか。メロンを食べている間に、サッカーの試合は、1点ビハインドの日本はパラグアイから1点入れて同点なってノーサイド。ほとんど日本ペースの試合だから、ドローは惜しいが、予選リーグでは負けないことが重要なので、終了間際に同点に追いついたことの意義は大きいだろう。W−CUPまでには順さんも回復のめどが立つとよいのだが。

 買い物で忘れていたが、もう一つ買ったものがある。それはコーラック(便秘薬)だ。実は順さんは手術後まだ便が出ていない。そのことを看護婦に言っても取り合ってくれないと言うことで、ちょっと拙い気もしたが、本人の意思を尊重して、また特に問題も無かろうと思って、購入に同意した。はたして今晩当たり結果が出るのだろうか?一応私は牛乳を買ってきたが、どうも飲みそうにはない。

 散歩の後クイズや文庫本を読んでいた順さんだが、疲れたのか5時過ぎに横になった。その後5時半過ぎに相撲を見ると言って、目を覚ました。丁度若乃花の相撲で、慎重な攻めで、彼女の好きな若乃花が勝った。

 夕食を食べてふと時間を見ると、6時30分過ぎ。52分にO駅から快速のある時間が迫っている。あわただしく病院を辞す。電車の接続がうまくいって、8時には最寄り駅に降り立つことが出来た。

 帰ってみると、順さんが以前より気にしていた赤十字募金の紙束が入っていた。実はこの2年間我が家は町内会の使いッパの番あたっているのだ。依頼分を作り、十数件分のポストに明日入れる予定だ。こうしたシステムが今日未だ生きていて、集金システムになっていることは、これまた驚異なのだが、面と向かって反対するエネルギーもない。ともかく、順さんに電話してそれが来たことを伝え、回らなければならない家の地図の在処を聞いた。以前聞いたようにも思ったが、いい加減に聞いていたわけだ。